コラム

『福祉部長のひとり言』(16)

~「社会的虐待」を考えてみる~

 

10/17京都新聞の記事「筋ジス病棟で『虐待』3割強」という記事があった。筋ジストロフィーという病気は子どものころに発症して、徐々に全身の筋肉が麻痺し、最後は呼吸するための筋肉や心臓を動かす筋肉も麻痺して最終的には死に至る難病だ。

 

 その人たちが入院している筋ジス病棟で18病院58人に2019年2月~2020年9月に行われた調査で、ナースコールの待ち時間が2時間5人、1時間5人、30分9人、「来なかったことがある」と答えたのは11人にも及んだ。そして過半数の患者が「ナースコールを手の届かないところに置かれた」経験をしている。

 4割の患者がコミュニケーション手段であるネット利用が制限されていた。女性患者の排せつや入浴などでの異性介助もあり、「入浴介助に初めて男性が来たときは泣いた」「恥ずかしいなんて、あなたがおかしいと職員に言われた」との回答もあった。

 

筋ジス病床の多くは旧国立病院にあるが、2020年現在、26病院2392床。入所10年以上の人は791人。1日平均利用者数に占める割合は42%と長期入院が顕著であり、契約・措置解除理由は「死亡」の176人が最多だ。

 

「こんな夜更けにバナナかよ」という映画を観た方もいるかもしれない。筋ジストロフィーの患者の自立生活を描いた映画だ。主人公の鹿野靖明(1959生~2002没)さんは、障害者総合支援法などなかった時期に24時間介助を受けながら、社会生活を続けた。

 

 筋ジス病棟での虐待は許されるものではないが、長期入院(社会的入院)を生み出し、容認・存続させていること自体、「社会的虐待」なのではないか。障害者虐待防止法には「通報義務」や「罰則」が記されているが、「社会的虐待」の通報先はない。

 

そして、障害者総合支援法の第一条(目的)には「障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」と書かれている。

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