コラム

『福祉部長のひとり言』(25)

「あなたは障害者権利条約を知っていますか?」

 

障害者権利条約は2006年に国連で採択された、障害者に関する初めての国際条約だ。(発効は2008年)この条約を作るための話し合いには、各国から多くの障害者が参加した。それは「私たちのことを、私たち抜きに決めないで!(Nothing About Us Without Us!)」という考えが重視されたからだ。「自分たちに関わる国際条約なのだから、自分たちが関わり作る」ということが実現してできたものだ。

 

この条約は、障害は病気や外傷等から生じる個人の問題であって、治療を必要だとする「医学モデル」の考え方ではなく、障害は社会が作るものだという「社会モデル」の考え方で作成されている。障害者が学べない学校であれば、学校の在り方を変えていこう、障害者が働けない職場であれば、職場の在り方を変えていこう、という考え方だ。

 

 今年8月、この条約による日本への審査が行われ、9月9日に勧告(総括所見)が出された。日本語訳を読んだが、障害者差別解消法などポジティブな側面を評価する一方、精神科医療の在り方と特別支援学校・学級などの分離教育について、多くの勧告や懸念が示された。

 

 今年度、障害者差別解消法によって「合理的配慮」が義務付けられたが、それはインクルーシブな社会、地域共生社会を目指す方向からだろう。特別支援教育という分離教育や強制入院という状況を放置していることこそが、合理的配慮を放棄しているとしか思えないのだが…。

 

障害者差別解消法の「社会的障壁」「合理的配慮」についての条文抜粋。(下線は筆者)

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)

第五条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。

 

*精神障害当事者会ポルケさんのホームページに精神障害者関連の障害者権利条約 総括所見の仮約がありました。https://porque.tokyo/2022/09/09/crpd-2/

*外務省の障害者権利条約パンフレットhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page25_000772.html

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