コラム

『福祉部長のひとり言』(6)

~「渡る世間に鬼はなし」~

 

法人内の研修会で「リカバリー概念」はアメリカやヨーロッパで生み出されたので、日本でそのまま使えるのか…という話し合いがなされていた。個人主義や宗教的土台の差異、文化の違いなど、日本的なカスタマイズが必要になるのかな…とも思う。

 

 欧米になく日本的なものに「世間」という概念がある。「世間」は、元々仏教用語の様で「世間体が悪い」「世間知らず」など、日常的に使っている言葉でもある。TVニュースで、不祥事を起こした官僚が「世間を騒がして…、世間に対し申し訳ない。」と答えていて、いやそこは国民に対してだろう!と思わず突っ込んだのだが…。

 

リカバリー概念や障害福祉関連における「ソーシャル」はもちろん世間ではなく、むしろ社会と訳されることが多い。社会という用語は欧米から持ち込まれ、訳されたものだ。

 

精神科医療福祉分野では「社会復帰」、「社会参加」、「社会的入院」、ソーシャルスキルトレーニング、ソーシャルワーク、といったように、社会とかソーシャルという用語にあふれているが、「世間」という言葉は公的な用語になることはない。

 

法律や制度は社会に対して作られ、「社会的支援」が行われてきたが、「世間様」はいまだに差別や排除を行い、「世間様に迷惑をかけない」ことを再教育していく。自粛警察やいろいろなバッシング行為からもわかるように、世間様には「顔がない」。

 

「世間に顔向けができない」と悩む前に「渡る世間に鬼はなし」かなのかな。

 

 

 

世間とは何か 講談社新書 著:阿部謹也

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